2012年1月20日金曜日

開業歯科医院を受診した経験のあるHIV感染者、感染の事実を伝えられない事例も

開業歯科医院を受診した経験のあるHIV感染者の中には、感染の事実を伝えずに治療を受けていた事例もあることが分かった。医院側の受け入れ体制が不十分な場合、感染の事実を伝えられないとする意見も少なくなく、HIV感染者が安心して病名を申告できる体制作りが急がれる現実も浮かび上がった。HIV感染者を対象に行ったアンケート調査で明らかになったもので、新潟大学の山中正文氏らが12月2日、セッション「歯科1」で発表した。

 アンケート調査は2005年2~3月に、北関東甲信越地区の病院を通じて、各病院が診療にあたっているHIV感染者を対象に行った。アンケートでは、患者の基本情報のほか、HIV・エイズの病状あるいは治療状況、これまで受けた歯科治療、今後の歯科治療への要望などを尋ねている。

 アンケートに応じた施設は11施設で、回答を寄せたのは86人だった。男性が66人、女性が20人で、平均年齢は45.3歳だった。年齢分布をみると、50歳代(26人)と30歳代(25人)にピークがあった。20歳代が10人、40歳代と60歳代がそれぞれ8人、70歳以上が2人だった(未記入7人)。県別では長野県と群馬県がそれぞれ23人で、新潟県が22人で続いた。
  
 歯科治療の経験を尋ねたところ、「ある」が60人、「ない」が26人だった。経験のある60人のうち、受診した施設については、大学病院が24人、一般病院が23人、開業歯科医院が7人、無回答が6人だった。

 感染事実の申告については、受診時に「申告した」が27人、「申告していない」が12人だった。開業歯科で治療を受けた7人は、全員が申告していなかった。

 申告しなかった理由については、コメントの中に医院側の受け入れ体制が不十分だと申告できないとする意見が多かったという。プライバシーが保たれることが安心して受診できる前提条件であることから、まずはプライバシー保護の観点からの体制作りが欠かせない。

 今後の歯科治療の希望場所については、「体制が整えば開業歯科医院」と回答した人が17人(回答者76人)おり、HIV感染者にとってのかかりつけ歯科医院の整備が急がれている。

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