HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)による心不全生命予後改善作用を示唆する報告がArch Intern Med1月10日号に掲載された。カナダSt. Michael"s HospitalのJoel G. Ray氏らが行った高齢者を対象としたレトロスペクティブな研究の結果だ。心筋梗塞減少作用は認められないものの、総死亡は減少していた。
  Ray氏らは、スタチンを服用しておらず、新規心不全による入退院後90日以上生存した66~88歳(平均76.5歳)の患者データを、入院中にスタチンを開始したスタチン群(1146例)と非服用群(2万7682例)に分け、レトロスペクティブに比較した。観察期間は平均7年間だった。
 その結果、スタチン群では「死亡、心筋梗塞、脳卒中」の発生率が13.6例/100例・年で、非服用群の21.8例/100例・年よりも有意に低かった(相対リスク:0.72、95%信頼区間:0.63~0.83)。イベントの内訳を見ると、有意に減少していたのは死亡のみで(相対リスク:0.67、 95%信頼区間:0.57~0.78)、心筋梗塞、脳卒中は減少傾向にとどまった。
 しかしながら両群の背景因子を比較すると、スタチン群は有意に若く(2.7歳)、また「心房細動・粗動」と診断されたことのある例はスタチン群で有意に少ない(25% vs 34%)にもかかわらず、クロピドグレル服用がスタチン群で有意に多かった(4.7% vs 1.5%)。ワルファリン服用率は同等だった(36% vs 38%)。
 一方、スタチン群では「狭心症(50% vs 35%)」、「心筋梗塞既往(21% vs 11%)」、「冠血行再建術既往(23% vs 7%)」、また高血圧・高血圧性心疾患と診断されたことのある例が有意に多かった(46% vs 36%)。さらに高脂血症(19 % vs 2%)、糖尿病(12% vs 9%)と診断された例の割合もスタチン群で有意に高かった。
 併用薬に関しては、ACE阻害薬(89% vs 83%)、アンジオテンシン2受容体拮抗薬(18% vs 11%)、β遮断薬 (67% vs 38%)、アスピリン(54% vs 42%)はいずれもスタチン群における服用率が有意に高かった。
 上記相対リスクは合併症や併用薬補正後の数字だが、生存率改善にスタチンが有意な因子であるかを検討する多変量解析は行われていない。生存率曲線を見る限り、Ray氏らも認める通り、慢性心不全に対しβ遮断薬をプラセボと比較した無作為化試験に類似している。
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