2012年1月20日金曜日

抗ウイルス薬の中枢神経性副作用、透析患者は特に注意 【世田谷区の歯科】

透析患者に対して抗ウイルス薬の塩酸バラシクロビル(商品名バルトレックス)やリン酸オセルタミビル(タミフル)を投与後、意識障害や幻覚などの中枢神経性副作用を起こした症例を、第26回日本臨床薬理学会年会で笠岡第一病院(岡山県笠岡市)内科の原田和博氏が発表した。

透析歴8年の72歳男性は、帯状疱疹に対してバルトレックス(1000mg/日)を処方された。服用を始めて3日目の起床後に脱力、言語障害、顔面のしびれ感があり、救急外来受診。同日に血液透析を行い症状は改善した。4日目以降もバルトレックスの服用は続けていたが、8日目に3日目と同様の症状が出現し、副作用を疑い服用を中止した。同日に血液透析を行い、症状は改善した。

透析歴2年の63歳女性は、インフルエンザの予防接種を受けていたにもかかわらず39.7℃の発熱、咳、喘鳴が出現し、救急外来を受診した。B型インフルエンザの診断でタミフルを処方された。症状の改善がみられなかったため、3日目にテオフィリン(テオドール)が追加された。4日目の朝、全身性の痙攣を起こして救急搬送された。ジアゼパム(セルシン)の静注でいったんは消失したものの、その後も間欠的に全身性痙攣を起こしたため、フェニトイン(アレビアチン)などの抗痙攣薬を投与したところ、痙攣は消失し、意識も清明になった。

バルトレックスやタミフルは、いずれも腎排泄性のため、腎機能が衰えると血中濃度が高まる。バルトレックスの添付文書には、血液透析を受けている患者の帯状疱疹に対する用量は1000mg/日と書かれているが、今回の場合は推奨用量でも副作用が起こったことになる。この症例では実際に血中濃度が測定されたが、健常人より著明に高値(約5倍)であった。

一方、タミフルの添付文書には、クレアチニンクリアランスが10以下の場合の推奨用量は「確立していない」としか書かれていない。

原田氏は「帯状疱疹やインフルエンザなどでは、透析を受けている医療機関ではなく、近医で抗ウイルス薬を処方されることも少なくない。腎機能障害のある患者や、透析中の患者への抗ウイルス薬の処方には、十分注意してほしい」と話している。(北澤京子、医療局編集委員)

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