プリオン病は、脳における広範な神経細胞の脱落、海綿状変性、病原性プリオンタンパク(PrPsc)の蓄積を特徴とします。
PrPscは宿主があらかじめもっている正常プリオンタンパク(PrPc)の立体構造が変化した結果、神経毒性をもつようになったものだが、その毒性に関するメカニズムは不明でした。
プリオン病に感染したマウスを使った実験では、PrPscの蓄積を阻害しても神経症状を抑える効果はないことがわかっております。
イギリス、神経学研究所のマルッチ博士らは、プリオン病に感染させたマウスにPrPcの発現を阻害する酵素を投与することによって、初期段階の海綿状変性が元に戻り、神経脱落と症状の進行が抑えられ、死亡を免れさせることに成功しました。
しかし、このマウスの脳における神経細胞外のPrPsc蓄積レベルは、プリオン病に感染して死亡した無処置マウスと同程度に高かったそうです。 
すなわち,神経細胞外のPrPscに毒性はなく、毒性をもつためには神経細胞内におけるPrPcからPrPscへの変換が必要であり、PrPc発現の阻害によりそれを阻止することによってプリオン病の進行を抑えることができたと博士らは考えています。
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